インタビュー趣旨などダミーインタビュー趣旨などダミーインタビュー趣旨などダミー街をつくるのは人、というより人が集まって暮らしている風景が街そのもの。だから、街がどんなところなのかを知りたくなれば、そこで誰がどんな風に暮らしているかを見てみたくなるのが人情というもの。 これまで自転車での街巡りなどのイベントをしかけてきた私たちツギ_ツギチームは、よりこの街を深く知りたい、そしてその魅力を共感できる誰かと共有したいという思いを募らせてきました。そこで、日常で誰しもがちょっと楽しみにしている「食」に注目。


語り手:横山欣司さん、田中一夫さん、平島 征さん、
御幸朋寿さん、酒井真樹さん、砂山太一さん、中山晴奈さん
聞き手:松浦廣樹、長澤剣太郎、木内俊克
(東京大学建築学専攻・ツギ_ツギ研究スタッフ)

「にんじんのおでんは珍しいね はじめて食べる うん このにんじんは美味しい にんじんの味がある 最近味がしないにんじんが多いから 牛すじも珍しいね 昔は入ってなかったんじゃない? 
私はがんもどきが好き いい味が出てますね おいしい お腹空いてるから それとね 人気があるのがちくわぶ あとはさつま揚げが好きですね うん おいしいよ 比較的高級なのでいうとね ばくだんていうやつ これはうずらだけどね ふつうの卵の周りにねりものつけて揚げてるやつ 当時一番高かったんじゃない? あと白滝は入ってましたよ 卵としゅうまいも入ってたんじゃなかったかね
あとね 子どもはあんまりおでん食べないけどね ウィンナーみたいなのは食べるからさ フランクみたいなの入れると喜ぶんじゃないですかね あーおいしかったぁ!」

11月のイベントで街の記憶を皆さんといただく為のメニューとして何が相応しいのか。
前回までの3回にわたるインタビューの中でその答えを探してきた我々ツギ_ツギスタッフは、住民の皆さんの話の中で幾度となくあらわれた「おでん」にそのターゲットを定め、その味にまつわる物語を探り始めました。上のエピソードは、ツギ_ツギで探し出した「三小鳥のおでん」を実際につくり、おでん情報発信源の一人、ヒラジマ・平島征さんに試食いただいたときのものです。

今回のインタビューでは、多岐にご協力いただいた松屋・遠藤さんのおかげで、かつて鳥越のおかず横丁でおでん種屋さんを営んでいた松村さんにもお話を伺うことができました。当時どんなおでん種がつくられていたか、細かいところまで教えていただき、また何と(!)、数十年前当時テレビ番組が取材した横丁の記録映像まで入手、取材は準備万端に進みました。

こうして万全を期して仕込んだおでんの試食、さぞかし当時のことをしんみり思い出すようなお話を伺えるのではと前のめりで迎えたその日でした。そこで冒頭の平島さんの言葉。「おいしい お腹空いてるから… あーおいしかったぁ!」

しんみりどころか、むしろ未来に向かって目を見開いた10代の部活真只中の青年のようなこの言葉にツギ_ツギスタッフ一同ハッと気づかされました。平島さんにとってのおでんはあくまで現在進行形だと。そしてお腹空いているから、ちょうどいいからおでんを食べる、ただ「何となく」そこにあらわれたおいしさを、いまの気分でおおらかに楽しんでいる。思い出話より、いまの子どもがどんなおでんなら楽しめるか、未来形の話をしたい。

こんな場面にツギ_ツギスタッフが出会ったのはこれが初めてではありませんでした。三小鳥界隈に住む3人の方々にインタビューをしたときのこと。みんな引越してしまう前までは、うち特にお二方は週に数回以上は必ずという、おかず横丁の居酒屋「いちがいもん」の常連さん。仕事上がりに特に示し合わせるでもなく、それぞれふらっと飲みに来て、そこで「いつも偶然」みんなと出会い、話し、盛り上がっていたとのこと。
ただ、ツギ_ツギスタッフが、「皆さんの引越しでこういう場所がなくなってしまうのは寂しいですよね、どこか新たにこういう場所ほしくないですか?」と聞く度に、一同揃って「いや別に」「安いから来てただけw」「そういうんじゃないんだよな~」といけずなかわし方でした。

そうなのです。

そこでツギ_ツギスタッフが気づいたのは、そんなことを言うのは野暮、彼らにとっての「いちがいもん」はそこに「なんとなく」あったからこその良さだったのであって、それらしい場を無理してつくりあげるのでは、まるで別物になってしまうということ。あくまで現在の自然な過ごし方の中で、いまの暮らしに「なんとなく」ある一期一会のよさを、「かけがえのなさ」として楽しむ作法。知っているようで知らなかった街の過ごし方がそこにありました。そしてそれは、かつても今も、おでんを現在形で召し上がる平島さんにも共通する、生活に潤いをもたらす作法でもあります。

そういうわけで三小鳥の皆さんに「かけがえのない なんとなさ」を教わったツギ_ツギスタッフとしては、成り行きで見つけたおいしいおでんを成り行きでつくり、11月4日(土)の三小鳥でそれをしっぽりいただく企画を、楽しんで進めていければと思います。「たまたま」近くにいらっしゃる方がいらしたら、ぜひ「ふと」思い出して立ち寄っていただくと、その美味しさをよりよく味わえるかもしれません。
ではイベントを乞うご期待というところで、最後におでんぐつぐつで「なんとなく」検索して出会った、久光良一さんという方の含蓄に富む俳句で〆たいと思います。日常の中のおでんを囲む場が、様々な人の関係をつむぐ役割を担ってきたんですね。

おでんぐつぐつ 嘘は大きい 方がいい

 

(文責:ツギ_ツギスタッフ・木内俊克)

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